ダウ理論とは、米国のジャーナリストであるチャールズ・ダウが提唱した、株式市場の動きを予測するための理論です。ダウ理論は、テクニカル分析の原点とも言われており、FXや先物などの他の市場にも応用できるとして、多くの投資家に支持されています。この記事では、ダウ理論の歴史と、チャート分析に使える6つの法則やインジケーターを紹介します。
ダウ理論の歴史
ダウ理論の産みの親であるチャールズ・ダウは、1851年に米国に生まれ、1872年に新聞記者となりました。1882年にはダウ・ジョーンズ社を設立し、経済ニュースレターの配布を始めました。1889年には日刊経済新聞『ウォール・ストリート・ジャーナル』を創刊し、1896年にはダウ・ジョーンズ工業平均株価の掲載を開始しました。ダウは、景気の循環を探ることを目的として、平均株価や市場の値動きについての理論を考案しました。しかし、ダウ自身はその理論を体系的にまとめることはなく、1900年から1902年にかけてウォール・ストリート・ジャーナルに執筆した255本の論説が、ダウ理論の原型となりました。ダウの死後、その論説をもとに、S・A・ネルソン、W・P・ハミルトン、R・レア、E・G・シェーファーといった人物が、ダウ理論を発展させていきました。
ダウ理論の6つの法則
ダウ理論は、次の6つの法則から構成されます。
- 法則①:価格はすべての事象を織り込む
- 経済指標や金融政策といったファンダメンタルズ要因、戦争やテロ、災害なども含めて、全ての事象はチャート上の値動きに反映されているという意味です。相場の値動きはこれらの事象を受けて形成される需給バランスによって日々変動しており、逆に言えばすべての情報が織り込まれた結果が現在のチャートであると考えることができます。この考え方は、チャート分析の有効性の根拠となります。
- 法則②:トレンドには3種類ある
- ダウ理論では、相場には次の3種類のトレンドがあるとされます。
- 長期トレンド:1年から数年間継続するトレンド。上昇または下降の明確な方向性を表す。
- 中期トレンド:3週間から3ヶ月間継続するトレンド。長期トレンドと逆行する調整局面を表す。
- 短期トレンド:3週間未満のトレンド。中期トレンドの短期的な調整局面を表す。
- ダウ理論では、相場には次の3種類のトレンドがあるとされます。
- 法則③:トレンドは3段階ある
- ダウ理論ではさらに、トレンドには次の3つの段階があると考えます。
- 第一段階「先行期」:一部の先行投資家が底値で買ったり、天井から売ったりして価格に緩やかな動きが出る時期。
- 第二段階「追随期」:市場価格の上昇や景気改善が見られ、多数の投資家が追随して買い始める時期。
- 第三段階「利食期」:価格が十分に上昇したところで、先行期にエントリーしていた投資家が利益確定する時期。
- ダウ理論ではさらに、トレンドには次の3つの段階があると考えます。
- 法則④:平均は相互に確認されなければならない
- より高い精度でトレンドをとらえるためには、複数の銘柄や市場で同じトレンドを確認するべきということです。ダウ理論は初期段階において、工業株価平均と鉄道株価平均で構成されていました。当時、両者はばらばらな動き方を示すものと認識されており、それらが同じ方向性を示さない限り、本格的な上昇トレンド/下降トレンドとはいえないと考えたのです。これを応用して、現代では相関関係のある通貨ペアや指標を確認するのが重要ということになります。
- 法則⑤:トレンドは出来高でも確認されなければならない
- ダウはシグナルを判断するための重要な要素として、出来高をあげています。出来高とは、一定期間中に成立した売買数量のことです。一般的に株式投資では出来高を確認することができ、市場の活性度合いや銘柄ごとの人気度を判断する指標となります。しかしFXでは、市場全体の出来高を正確に確認することは難しく、この法則はあまり当てはまらないと言われています。
- 法則⑥:トレンドは明確な転換シグナルが出るまで続く
- ダウ理論では、発生したトレンドは明確なトレンド転換シグナルが出るまで継続すると考えます。トレンド転換シグナルとは、高値や安値の切り上げ/切り下げというトレンドの定義が崩れたときに発生するシグナルのことです。この法則は、トレンドフォローの売買戦略の優位性の根拠となります。
ダウ理論を用いたトレードのコツ
ダウ理論は、多くの投資家に支持されています。この記事では、ダウ理論を用いたトレードのコツと、6つの法則を活かす方法を紹介します。
ダウ理論を用いたトレードのコツは、次の3点です。
- トレンドに従う
- トレンド転換を見極める
- トレンドの段階を把握する
トレンドに従う
ダウ理論では、相場には長期・中期・短期の3種類のトレンドがあるとされます。トレンドに従ってトレードすることが、安定した利益を得るための基本です。トレンドに従うためには、自分のトレードスタイルに合わせて、適切な時間軸のチャートを使うことが重要です。例えば、スイングトレードをするなら日足や週足のチャートを、デイトレードをするなら1時間足や4時間足のチャートを、スキャルピングをするなら5分足や15分足のチャートを参考にしましょう。また、複数の時間軸のチャートを併用して、トレンドの方向性や強さを確認することも有効です。
トレンド転換を見極める
ダウ理論では、トレンドは明確な転換シグナルが出るまで続くと考えます。トレンド転換シグナルとは、高値や安値の切り上げ/切り下げというトレンドの定義が崩れたときに発生するシグナルのことです。トレンド転換シグナルを見極めることで、トレンドの終了や新たなトレンドの始まりを捉えることができます。トレンド転換シグナルを見極めるためには、トレンドラインやサポート・レジスタンスラインなどのツールを使うことが有効です。また、トレンド転換シグナルは、出来高やインジケーターなどで補強することもできます。
トレンドの段階を把握する
ダウ理論では、トレンドには先行期・追随期・利食い期の3つの段階があると考えます。トレンドの段階を把握することで、エントリーやエグジットのタイミングを最適化することができます。トレンドの段階を把握するためには、ニュースや経済指標などのファンダメンタルズ要因や、市場参加者の心理状態などを考慮することが重要です。また、トレンドの段階は、ローソク足やチャートパターンなどで視覚的に判断することもできます。
ダウ理論を活かす方法
ダウ理論を活かす方法は、次の2点です。
- インジケーターを使う
- トレード手法を組み合わせる
インジケーターを使う
ダウ理論は、チャートの値動きだけで相場の動きを分析することができるという理論ですが、インジケーターを使って補強することで、より精度の高いトレードができるようになります。インジケーターとは、チャートの値動きに基づいて計算される数値やグラフのことで、トレンドの方向性や強さ、転換点などを判断するのに役立ちます。ダウ理論と相性の良いインジケーターは、次のようなものがあります。
- 移動平均線:チャートの平均値を線で表したもので、トレンドの方向性や強さを判断するのに使えます。移動平均線が上向きなら上昇トレンド、下向きなら下降トレンドと判断できます。また、移動平均線同士の交差や、チャートとの交差は、トレンド転換のシグナルとなります。
- MACD:移動平均線の差を表したもので、トレンドの強さや転換点を判断するのに使えます。MACDがプラスの値を示しているときは上昇トレンド、マイナスの値を示しているときは下降トレンドと判断できます。また、MACDとシグナル線との交差や、ゼロラインとの交差は、トレンド転換のシグナルとなります。
- RSI:相対力指数とも呼ばれるもので、チャートの上昇力と下降力のバランスを表したもので、トレンドの強さや転換点を判断するのに使えます。RSIが70以上の値を示しているときは買われ過ぎ、30以下の値を示しているときは売られ過ぎと判断できます。また、RSIがトレンドラインと逆方向に動くときは、トレンド転換のシグナルとなります。
トレード手法を組み合わせる
ダウ理論は、チャート分析の基本となる理論ですが、それだけでトレードするのは難しいと言えます。ダウ理論を活かすためには、他のトレード手法と組み合わせることが有効です。トレード手法とは、エントリーやエグジットのタイミングやルールを決める方法のことで、次のようなものがあります。
- トレンドフォロー:トレンドに沿ってエントリーやエグジットを行う手法です。トレンドフォローでは、トレンドの始まりや終わりを捉えるよりも、トレンドの中期的な動きに乗ることを目指します。トレンドフォローをするためには、移動平均線やMACDなどのインジケーターを使って、トレンドの方向性や強さを判断します。また、トレンドラインやサポート・レジスタンスラインなどを使って、エントリーやエグジットのポイントを決めます。トレンドフォローのメリットは、トレンドが継続する限り、安定した利益を得ることができることです。トレンドフォローのデメリットは、トレンドが転換するときに大きな損失を出す可能性があることです。
- 逆張り:トレンドに逆らってエントリーやエグジットを行う手法です。逆張りでは、相場が一時的に過剰に上昇したり下降したりする場合に、反転するタイミングを狙います。逆張りをするためには、ボリンジャーバンドやRSIなどのインジケーターを使って、買われ過ぎや売られ過ぎの状態を判断します。逆張りのメリットは、大きな利益を狙えることです。逆張りのデメリットは、トレンドが継続すると大きな損失を出す可能性があることです。
- ブレイクアウト:相場が一定の範囲内で動いているときに、その範囲を突破する方向にエントリーやエグジットを行う手法です。ブレイクアウトでは、相場がサポートラインやレジスタンスラインと呼ばれる価格帯に到達したときに、そのラインを抜けるかどうかを見極めます。ブレイクアウトをするためには、出来高やMACDなどのインジケーターを使って、突破の強さや信頼性を確認します。ブレイクアウトのメリットは、トレンドの始まりや終わりを捉えやすいことです。ブレイクアウトのデメリットは、突破が偽物である場合に損失を出す可能性があることです。
- プライスアクション:チャートの値動きだけで相場の動きを分析する手法です。プライスアクションでは、インジケーターを使わずに、ローソク足やチャートパターンなどを使って、相場の心理状態やトレンドの方向性や強さを判断します。プライスアクションをするためには、チャートの読み方やパターンの種類を覚える必要があります。プライスアクションのメリットは、シンプルで直感的なトレードができることです。プライスアクションのデメリットは、チャートの解釈に主観が入りやすいことです。
以上のように、トレード手法には、トレンドフォロー以外にも、様々なものがあります。それぞれにメリットやデメリットがありますので、自分のトレードスタイルや目的に合わせて、適切な手法を選ぶことが大切です。トレード手法についてもっと詳しく知りたい場合は、以下の記事を参考にしてください。
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